過去の企画展

再興九谷「組物」(後期展)~吉田屋・宮本屋・松山の起程を尋ねる~

平成23年10月19日(水)~平成24年1月16日(月)まで
ギャラリートーク:10月23日(日) 14時~ / 11月6日(日) 14時~ / 12月4日(日) 14時~

再興九谷組物後期展チラシ画像

  本展は、九谷焼における「組物」というジャンルにはじめて焦点をあてたものです。
  組物とは、同じ形状や絵文様の器が揃うことで成り立っているもので、古来より晴れ(ハレ)の日、祝事の際に用いられる会席具のひとつであり、鑑賞に供される一方で、用の美が求められるものでした。今回展示対象としたものは、再興九谷のなかでも特に人気の高い吉田屋・宮本屋・松山として伝世してきた品々ですが、いずれも「後世の分散」による資料不足によって、その実態を把握することはより困難になっていくことが予想されるものです。
  会期は、平成22年10月20日(水)~平成23年1月17日(月)を前期展、平成23年10月19日(水)~平成24年1月16日(月)を後期展として、平成22・23年度に連続する秋期企画展として行うものです。前期、後期を合わせた展示件点数は合計で72件378点(吉田屋24件103点、宮本屋17件105点、松山30件150点、青九谷1件20点)となり、九谷焼の展覧会としてはこれまでにない大きな規模のものとなりました。展示に際しては、絵替品や加賀市所蔵品に対する重ね展示(緩衝済)以外は一律5客としましたが、あくまで「組物」としての有り様を良く知っていただくため、6客以上伝世する18件分についてはその総体を展示作品の上部に写真パネルとして展示しました。パネル展示を含めた伝世組物総点数(調査総点数)は、559点(吉田屋149点、宮本屋180点、松山210点、青九谷20点)にのぼります。
  本展覧会では、主に次の点を重視しています。(1)とにかく「組物」の存在を知っていただくこと(現在1点で伝世する作品は元は組物であった可能性もあること)、(2)組物(集合体)状態のまま伝世したからこそ把握できる作品個々のもつ「情報」の比較(重さの違い、表裏対応性、目跡の有無、高台の種類など)により、組物の魅力に迫ること、(3)集合体から放たれる「美しさ」や「豪華さ」と、これに対するいずれは分散してしまう可能性への「はかなさ」や「希少性」をみること。
  吉田屋、宮本屋、松山の組物の内、特に山代出来の吉田屋と宮本屋に限れば、これらの製造場所であった当館、九谷焼窯跡展示館での開催が真の「里帰り」となります。この場所からスタートした組物が長い旅路(最長で185年)を経て、数は減りながらも辛うじて組物の状態を保ったまま戻ってきたことになります。今後万が一、これらの組物が(さらに)分散した場合、元の組み合わされていた状態に戻すことはほぼ不可能です。すなわち、組物の状態であるうちは、その起程(ものごとの起こり始め)を尋ねることのできるまたとないチャンスであり、これだけまとまった数の伝世組物の存在の記録と公開は、九谷陶磁史の一ページに大きく貢献できるものとなります。本展をきっかけとして「組物」の魅力がひろく発信され、分散の危機に対する警鐘となることを期待するとともに、これらの組物が末永く愛玩され、受け継がれていくことを願ってやみません。

出品目録

※当文章中のNo.○とは、後期展でのNo.であり、前期展、後期展あわせた展観図録『再興九谷「組物」展~吉田屋・宮本屋・松山のうつわぞろえの起程を尋ねる~』(九谷焼窯跡展示館、2011)中にある出品目録No.とは異なるものである。

No. 窯名 組物作品名 制作時代 展示点数 伝世
組物点数
所蔵
1 吉田屋 群蝶図段縁形大皿(「文政十三年寅二月出耒」箱) 江戸時代後期 5 20 個人
2 吉田屋 瓜図捻子八角形小鉢 江戸時代後期 5 5 個人
3 吉田屋 鳳凰図兜花唐草文四方形小鉢 江戸時代後期 5 5 個人
4 吉田屋 梅椿に鶯図漢詩入隅切長角形皿 江戸時代後期 3 3 個人
5 吉田屋 椿図琵琶形向付(花紺青) 江戸時代後期 5 5 個人
6 吉田屋 紫陽花に鳥図木瓜形向付 江戸時代後期 2 2 個人
7 吉田屋 楼閣山水図木瓜形向付 江戸時代後期 1 1 個人
8 吉田屋 百合図輪花形皿 江戸時代後期 5 9 個人
9 吉田屋 椿図花形小皿 江戸時代後期 5 5 個人
10 吉田屋 椿図花形小皿(紺青入) 江戸時代後期 2 2 個人
11 吉田屋 椿図隅切角形小皿 江戸時代後期 5 5 個人
12 吉田屋 丸龍図隅切角形小皿(「文政十年秋八月・・・」箱) 江戸時代後期 5 9 個人
13 吉田屋 瓜図隅切菱形小皿 江戸時代後期 2 2 個人
14 吉田屋 松竹梅図三ッ組平盃 江戸時代後期 3 3 個人
15 宮本屋 青手双鴨図輪花形大皿 江戸時代後期 2 2 個人
16 宮本屋 青手紫陽花に鳥図輪花形大皿 江戸時代後期 2 2 個人
17 宮本屋 赤絵彩色金彩農耕図絵替角形小皿 江戸時代後期 19 19 個人
18 宮本屋 青手菊に蘭文八角形猪口 江戸時代後期 3 3 個人
19 宮本屋 赤絵金彩小紋尽扇文八角形猪口 江戸時代後期 5 5 個人
20 宮本屋 赤絵金彩鶴図瓔珞文輪花形向付 江戸時代後期 5 10 個人
21 宮本屋 赤絵金彩龍人物図六角形徳利 一対 江戸時代後期 2 2 個人
22 宮本屋 赤絵金彩福禄寿字人物図湯飲 一対 江戸時代後期 2 2 個人
23 松山 丸龍図兜花文大皿 江戸時代末期 5 5 個人
24 松山 絵替農耕図大皿 江戸時代末期 10 10 個人
25 松山 麒麟図福良雀文三ッ組鉢 江戸時代末期 3 3 個人
26 松山 獅子図牡丹文三ッ組鉦鉢 江戸時代末期 3 3 個人
27 松山 丸龍図小皿 (「安政六未ノ年・・・」箱) 江戸時代末期 10 10 当館
28 松山 丸龍図小皿 江戸時代末期 5 20 個人
29 松山 丸龍図龍珠入小皿 江戸時代末期 5 5 個人
30 松山 丸龍図小皿 江戸時代末期 1 1 個人
31 松山 山水家屋図輪花形小皿 江戸時代末期 3 3 個人
32 松山 桔梗図小皿 江戸時代末期 5 5 個人
33 松山 波に千鳥図猪口 江戸時代末期 5 5 個人
34 松山 紅葉翼果図盃、孔雀羽根に宝珠図盃 江戸時代末期 5 5 個人
35 松山 牡丹図小皿 江戸時代末期 44 44 個人

後期展出品内訳

展示件数:35件(吉田屋14件、宮本屋8件、松山13件)
展示点数:197点(吉田屋53点、宮本屋40点、松山104点)
伝世組物点数(パネル展示数含):240点(吉田屋76点、宮本屋45点、松山119点)
※調査(本展の主旨)の都合上、No.35は参考出品とする。
※No.1、No.12の内4客、No.17、No.27は前期展と重複するものである。

さいごに

  本展覧会は、組物から紐解く九谷焼をテーマとして掲げた。これまで見落とされがちであった組物作品ひとつひとつの「差異」をみつめ、「差異」=「見所」ともいえる重さ、絵文様、素地や釉薬などの各調子のそれぞれをデータ化することによって分類・比較し、組物の実体の一部を垣間見る試みをした。その結果、素地成形、釉掛けや絵付けなどの細部はけして画一的なものではなく、度量が大きく快活で、小さなことにはこだわらない自由性やそれから生み出される固有性が随所に見られることから、その制作には陶工や画工というより、今でいう芸術家(画家・絵師)、クリエイター的な存在が関与していることが考えられた。そして当然、これらの背景には優れて立派な指導者、報酬者、世間の消費者の姿・形があったことはいうまでもない。
  また、多くの伝世品も元を辿れば組物であった可能性は低くはなく、現在語られているその作品ごとの特徴は、実はその作品が持ち合わせていた情報の「一端」に過ぎないものであったと言える。「組物」というフィルターを通すことではじめて把握されることは多い。
  以上のように、九谷焼の「組物」について考えてはきたものの、その内容を理解するといえるだけの資料はまったく十分ではなく、まだまだ不明な点も多い。この展覧会をきっかけとして多くの組物の掘り出しがおこなわれ、組物研究によって多くのことが明らかになっていくとともに、その魅力がひろく発信されることを心より強く願うものである。

作品紹介:加賀市教育委員会事務局文化課 学芸員 中越康介

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再興九谷組物展図録画像

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「組物」展(前期展・後期展)の出品作全559点の他、図版解説や各種九谷焼関連資料が収録されたものです。
郵送での販売もお受けしています。詳しくは『展観図録販売について』をご覧ください。

  • 展観図録内容
    1. 総頁数 112ページ
    2. カラー頁数 71ページ
    3. 発行年 2011年
    4. 販売価格 1,200円


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