過去の企画展

再興九谷「組物」(後期展)~吉田屋・宮本屋・松山の起程を尋ねる~

平成23年10月19日(水)~平成24年1月16日(月)まで

No.17 宮本屋 赤絵彩色金彩農耕図絵替角形小皿 19客

  絵替で19客の組物である。箱蓋表には「八郎作 色絵農作絵小皿廿」、身側面には「八郎作 色絵色絵農作絵小皿廿枚」、「九谷 四角手塩皿 廿人前」、蔵番シールには「第一三九号 八郎耕作図四方皿二拾」とある。この箱が製作された時点では20客あったものである。
  この作品は前期展で出品された「宮本屋 赤絵彩色金彩農耕図絵替八角形小皿 20客」と同じ粉本を用いているが、絵付師は異なるものである。こちらの方が繊細で、農業技術や道具の再現に詳しい。というよりも、粉本に忠実であるのであり、例えば「鳴子と、鍬を持って田に向かう」図では、当作では鍬を肩に持つ人物の背景の鳴子とその紐がはっきりと分けて描かれているが、前期展作では吊るす紐がなくなり、人物の膝辺りには紐なしの鳴子が空中に浮いてしまっており、鍬との造形差も無くなっている。これは、粉本からの孫引きを意味し、絵師本人も何を描いているのかわからなくなってしまっている状態である。つまり前期展作の制作時代は当作より若干下がるものと考えられる。
  20客中の無い1点は、前期展作との比較から、小昼運びの図であることがわかる。これを現在の所有者が残念がっていたところ、小昼運びを備えた同じ宮本屋の大鉦鉢を入手されて20場面がすべて揃ったという逸話がある。
  九谷焼の農耕図自体が大変少ないが、宮本屋の農耕図になるともっと少ない。大型作品でこの大鉦鉢以外には、一回り小さい鉦鉢や輪花皿がいくつか身近に伝世する。これらは前期展作や当作の小皿の中のいずれかの場面を拡大・2場面を組み合わせたものであり、粉本も同じであることがわかる。つまり、この大鉦鉢(約37センチ)、鉦鉢(約30センチ)、輪花皿(約21センチ)には高い確率で今回の小皿と同じ場面が存在し、小型作品だけではなく大型作品でも組物・シリーズ物が制作されていたことが想定されるのである。これは、大型作品は一品物であるというこれまでの概念を捉えなおすきっかけとなるものである。また、明治九谷の名工で知られる竹内吟秋は農耕図の花瓶を制作しているが、この農耕図のデザインはこれら宮本屋のものと全く同じである。宮本屋で修行したとされる吟秋は宮本屋の農耕図の粉本を知っていたのかもしれない。
  紺青は花紺青である。梅花皮は3番、5番、17番には無いが、その他は有りかやや有りである。梅花皮というよりは釉掛け不足のものも一部見られる。裏銘は一重角福で、福字の旁の左側は一本につながっている。

宮本屋赤絵彩色金彩農耕図絵替角形小皿写真

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